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意識は情報が統合されているから発生する?『意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論』

私たち人間は、考え、行動を起こします。
その根本は「意識」だと考えられています。

その意識とはなんでしょうか?
意識はどのような仕組みで発生するのでしょうか?

意識は多様な情報が統合された状態で発生するという『統合情報理論』というものがあります。
今回はジュリオ・トノーニ/マルチェッロ・マッスィミーニ著の『意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論』について紹介します。

意識とは何か
意識の定義は難しい。
一般的に感覚や知覚、思考、自律的な心の動きなどの総体を意識と読んでいます。

意識の有無を外から判断するのは困難である
意識は脳から発生することが分かっているが頭蓋骨から脳を取り出しても、意識を確認することはできない。
そして意識があるかどうかを外見や行動で判断できない。
身体が動かせなくても意識が有る場面があるからだ。
例えば夢をみるのはレム睡眠時だが平常時と同様に脳は動いている。
意識は脳の視床~皮質系に関連がある
視床~大脳皮質が機能していない場合、脳脳幹のニューロンが活動し目を開いていても意識が回復しないことがある。p70
左右の脳を繋ぐ脳梁を切断すると意識が2つになる
てんかんの手術で脳梁を切断する場合がある。
脳梁は左右の脳を接続している部位だ。
脳梁を切断すると左右の情報伝達が遮断され2つの精神が存在する状態になる。
参考記事:人格の同一性の問題
統合情報理論
脳はたくさんの情報を整理し意思決定を行う。
小脳の情報の動きは常にシンプルで統合されていないため、小脳を摘出しても意識は残る。
視床~皮質系は情報のレベル差が大きく複雑であるため、その情報が統合され一つの意識を宿す。(複雑系)
意識がないときの視床~皮質系の情報の流れはシンプル
ノンレム睡眠時や麻酔中などの意識が無い状態では、視床~皮質系の情報の流れはシンプルである。
夢を見ているとき(ノンレム睡眠時)は意識がある状態だ。(認知しているので)
その場面では情報が複雑に動くため多様な情報を統合している状態が意識があると言える。

意識がある脳に磁気刺激を与える→複雑なエコーの広がりをみせる
意識が無い脳に同様の刺激を与える→単調なとびとびの動きしかみられない

他の動物にも当てはまるのか?
人間と同じく視床~皮質系を持っている動物はいるが、「どう感じるか?」はわからない。
意識の探求はまだ始まったばかり、今後に期待
意識の本格的な研究は1990年代から始まったと言われている。
統合情報理論やその他の知見などを総合して研究を進めていく必要がある。
もし統合情報理論が立証されて脳が情報をどう統合ているのかわかれば、それと同じ機能を搭載する最新機器が登場することになるかもしれない。